BECK BOGERT & APPICE / 1973.5.14 / 日本武道館

ベック、ボガート&アピス(以下BBA)が来日した1973年も来日ラッシュだった。3月にはイエスとユーライア・ヒープの神と悪魔の対決。4月にはデヴィッド・ボウイ、そして5月には勢いガンガンのハンブル・パイとBBAが来日している。
BBAのアルバムを1枚しか出していないのに、いきなり武道館公演というのは当時としては異例の事だった。それだけ関心が高かったということであろう。

ロッド・スチュワート、ロン・ウッドらとのジェフ・ベック・グループを解散した後、同じくヴァニラ・ファッジを辞めたティム・ボガート(ベース)とカーマイン・アピス(ドラム)と新グループ結成を考えていたがベックの交通事故でそのプランは白紙になっている。ちなみにその時、ボーカルに予定されていたのは、ロッド・スチュワートであった。
ベックの交通事故で取り残されたボガートとアピスはカクタスを結成する事になる。にわかバンドらしくサウンドの方はヴァニラ・ファッジがよりハードになったような音でしかなかった。(個人的には嫌いでなかったが)
ベックの方も回復したものの2人が別のバンドを結成してしまったので、自らのバンドを結成する。いわゆる2ndジェフ・ベック・グループである。ドラムにコージー・パウエル、キーボードにマックス・ミドルトンを起用したこのグループは結果的に2枚の名作アルバムを残して解散する事になる。この頃からベックのサウンドは、ブラック音楽の下地を持ったフュージョン・サウンドの色を残している事から、このバンドでの経験はのちのベックにとって大きな糧となったに違いない。
ベックのバンド解散、カクタスの解散で、ついに満を持した感じでBBAが結成される。ただ大きな誤算がもう一つあった。ボーカルに予定していたロッド・スチュワートがロン・ウッドと結成したフェイセスで大きな成功をあげていたため不参加だった事だ。従ってトリオでのバンド結成となる。

スタジオ録音のデビュー・アルバムを引っさげて来日したBBAは超満員の武道館で演奏を開始した。オープニングはシングル・カットもされて耳慣れたスティービー・ワンダーのカバー曲『迷信』。当時、初めて耳にするトーキング・モジュレーターの音で会場を盛り上げる。ベック以降、日本人のギタリストもトーキング・モジュレーターを使用する事が多くなったが、クチにチューブを咥えてギターの音とユニゾンで声で音を出し、それをイコライズィングするわけだが、このエフェクトの最大の欠点はやたら「唾液」が出てくることだ。従って、痴呆のようにヨダレだらけでギターを弾いているギタリストがたくさん出現した。その点、ベックは美しく演奏していたあたりも名ギタリストのいわれかもしれない。

曲は、曲目表にもあるように、デビュー・アルバムからはほとんど演奏し、更には、ジェフ・ベック・グループ時代の曲まで演奏した。懸念されたボーカルもカーマイン・アピス、ティム・ボガートがハイトーン・ボイスでうまくこなしていた。
武道館のステージ上にメンバーが3人だけというのは見た目ではかなり珍しく、存在感のあるバンドであった事は確かだ。ただ、メンバー3人というといまだにクリームの幻影があった時代なので、自然にクリームより「すごい」ことを期待していたファンが多かったようだ。
確かにテクニックにおいてはクリームに負けないものは持っていたのだが、どうにもスリルに欠けていたような気がした。ソツがないというか、ジャム・セッションを見せられているような感じというのが、一番適切な表現のような気がする。
とにかく音がでかいというのもBBAの印象である。しかも全員、楽器に関してはリーダーで、リード・ギターVSリード・ベースVSリード・ドラムという感じ。それが一番如実に現れた曲が『レディ』。ライブ・レコードで聴いても分かるようにとにかく喧しい。でもカッコいい。困ったもんだ。
アンコールの『プリンス』から『ショットガン』へのメドレーは彼らが通過してきた音楽を全て感じられるほど素晴らしい演奏であった事はぜひ伝えるべきだと思っている。

最後に、クリーム、GFR、BBAなどロック最強トリオと呼ばれるグループは多いが、私が最強トリオと呼べるのは残念ながらクリーム、GFRでもなくBBAでもなく、ポリスだと信じている。

■演奏曲目■

-迷信
-君に首ったけ
-ジェフズ・ブギー
-ゴーイン・ダウン
-ブギー
-モーニング・デユー
-スイート・スイート・サレンダー
-リヴィン・アローン
-アイム・ソー・プラウド
-レディ
-黒ねこの叫び
-ホワイ・シュド・アイ・ケア

アンコール:
-プリンス〜ショットガン
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DEEP PURPLE / 1972.8.17 / 日本武道館


DEEP PURPLEが初来日公演を果たした1972年も前年1971年の外タレ元年に劣らずの来日ラッシュだった。その年に来日公演をしたのは、CCR、PINK FLOYD、TEN YEARS AFTER、PROCOL HARUM、EL&P、T・REX、3 DOG NIGHTなど。

DEEP PURPLE公演は夏のど真ん中、8月17日に東京は武道館で1回、大阪はフェステイバル・ホールで2回だったと思う。大阪フェスティバル・ホールでロックのコンサート、しかもDEEP PURPLE、今からは想像もできないでしょ?
来日した時のDEEP PURPLEは第2期とされているメンバーで、ボーカル:イアン・ギラン、ギター:リッチー・ブラックモア、ベース:ロジャー・グローバー、ドラム:イアン・ペイス、キーボード:ジョン・ロードの5人。
ちょうど「MACHINE HEAD」をリリースした後の来日であった。

会場の武道館は大物ロック・バンドのコンサート会場としては定番になりつつあったが、当時の我々からすると大きすぎて、イヤなところという感じがしていた。
というのは、翌年来日するDAVID BOWIEやHUMBLE PIE、YESなんかは渋谷公会堂クラスでコンサートをしているからだ。
そう言えば、最近の部類に入ってしまうが、U2も初来日コンサートは渋谷公会堂だったっけ。

DEEP PURPLEは『MACHINE HEAD』で日本でも大ブレイクしたものの、イメージ的にZEPPELINより格下、という感じが当時あったような気がする。そんな評判をいっぺんに吹き飛ばしてしまったのが、この来日公演であった。この時の公演は後に『IVE IN JAPAN』としてリリースされたことはあまりにも有名だが、当時は日本だけの限定発売だったと記憶している。

会場は何故だか分からないが、なんとなく優等生的なロック・ファンが多かったような気がする。
そんな違和感もオープニングの『HIGHWAY STAR』のイントロがフェード・インぎみに鳴り響いたとたんにどこかへ行ってしまった。それほど、この公演のオープニングはインパクトがあった。おそらく、私が見た数多くのロック・コンサートの中でも1番かもしれないと思うほどの印象だった。たまに『LIVE IN JAPAN』を聴くとその当時を思い出し、聴くたびに鳥肌が立つほどだ。
ジョン・ロードのキーボード間奏のあと、ついに待っていたリッチーのギター。アルバムで聴きなれたフレーズが聴こえてくるともう涙、涙。武道館中こだまするリッチーのギターは滑らかでかつストロング。これほどストラトの特性を知り尽くしているギタリストはそうざらにはいないと言う感じだった。
興奮の1曲目が終わると間髪いれずに2曲目『SMOKE ON THE WATER』。ギター小僧なら誰でも一度は弾いてみたあのフレーズ。もう興奮状態はすでにレッド・ゾーンを突破して右にくっついたままという感じだ。
3曲目『CHILD IN TIME』へと続き、さらに興奮のレベルは下がることはない。『
STRANGE KIND OF WOMAN』『LAZY』そして最後の曲『SPACE TRACKIN'』まで、演奏のレベルは非常に高く、ややもするとありがちな、ステージ上のメンバーのみが楽しんでいるだけのような無用に長いソロ演奏もなく、素晴らしいの一語に尽きるものであった。
アンコールは、シングルでおなじみの『BLACK NIGHT』『SPEED KING』。演奏時間自体は1時間半に満たないものだったと思うが、満足度は100%を軽く超えるものだった。DEEP PURPLEはこの来日公演でZEPPELINとも肩を並べ、確実に大物としてこれ以降君臨していく事になる。

リッチーがギター・パフォーマンスでストラトを叩きつけ、壊すシーンがあったのだが、壊す直前に一度、ステージ上から消えるのだが、実はギターをチェンジしていて、壊したのは、フェルナンデスのストラト・モデルだったなどという噂も後日談としてでていた。
翌、73年にも同じメンバーで再来日を果たしたDEEP PURPLEは、武道館で2公演を予定していた。しかし初日の公演で、演奏曲目が、前年と同じことで怒ったファンがアンコール前の曲で放ったロケット花火がリッチーの足元で爆発し、それに怒ったメンバーがアンコールをしなかった。そのため大暴動となり、武道館の蛍光灯は槍投げの槍のごとく投げつけられ、アリーナのパイプイスも投げられ山積み状態、壁の時計も引きちぎられるという暴動が起こり、翌日の公演は中止という事件にまで発展した。

■演奏曲目■

-ハイウェイ・スター
-スモーク・オン・ザ・ウォーター
-チャイルド・イン・タイム
-ミュール
-ストレンジ・ウーマン
-レイジー
-スペース・トラッキン

アンコール:
-ブラック・ナイト
-スピード・キング
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LED ZEPPELIN / 1971.9.23 / 日本武道館


この年、1971年は「外タレ元年」と言っていいほど、今まで考えられないぐらいの注目ロック・バンドが来日コンサートを行なったと記憶している。2月にBST、4月にはFREE、6月にChicago、7月にGFR、8月はPINK FLOYD、そしてツェッペリンの後にはELON JOHNも来日している。
どうして急にこんなことになったのかは、当時高校生だった自分にはわからなかったが、全部見るにはお金がなさすぎたという悩みがあったことだけは記憶している。
当時のチケットの値段はS席が2800円ぐらい、C席まであってそれが1500円だったと記憶している。チケットの発売方法は今のようにオンライン・システムなどないので、全てプロモーターの事務所とプレイガイドでの手売りのみ。従って、渋谷のプレイガイドでは売り切れたが、上野のプレイガイドにはまだ売れ残っている、よし!そっちに行こうなどという状況がしょっちゅうだった。今、改めて思い出してみると間抜けな話のようだが、その時代を反映しているエピソードのひとつでもある。

でツェッペリンだが、4枚目のアルバム、俗称『4シンボルズ』をリリースした直後の来日だったようだ。来日2ヶ月前に当時の後楽園球場でグランド・ファンク・レイルロード(GFR)が雨の中でのロック・コンサートという一般新聞にも掲載されるようなムーブメントを起こしていただけに、ツェッペリンへの期待感は大変高かった。

コンサートは、当時、唯一ツェッペリンのライブを聞くことができる海賊盤『ブルベリーヒル』と構成はほとんど一緒。
オープニングは、3枚目のアルバムからシングル・カットされた『移民の歌』。この曲以外にオープニングは考えられないというほど、印象的なフレーズが鳴り響くと、ステージ上には、ミュージック・ライフで見たままの4人が立っていた。ジミー・ペイジは、それで弾けるのと言うぐらいストラップを長くして低い位置でギターを弾きまくる。ロバート・プラントはローウエストのジーンズにボレロ風のジャケットを素肌にまとっている。ジョン・ポール・ジョーンズはひかえめに黙々とベースを弾いている。ジョン・ボーナムは暴れん坊のごとく体全体でドラムを叩く、全く想像していたとおりの絵ずらであった。2曲目の『ハートブレイカー』へは切れ目なく、メドレーで突入。その後、ブルースを基調にした『貴方を愛し続けて』へと耳慣れた曲が続く、今思うと音はかなり悪かったんだと思う。ベースの音がモコモコ武道館中を包んでいたような気もする。
ちょっと意外だったのが、ジミー・ペイジの演奏がかなり荒かったことだ。しかもミス・トーンも多かった。これがライブの醍醐味さなどと無理に納得していたものの、翌年の再来日の時もそうだったこととあわせ考えると、これは何だったんだろう?もしかしてあまり巧くないのでは?とも考えられる。
更に、『幻惑されて』ではジミー・ペイジのギター・サイケデリックな世界が展開されるのだが、ギター・ソロが延々30分近くも続くと贔屓目で見ていても辛くなってしまう。それは『モビー・ディック』でのジョン・ボーナムのドラム・ソロでも同様のことが言えてしまう。
しかし、『天国への階段』でのジミー・ペイジの12弦と6弦のツイン・ネックのギターは、これまた写真で見た通りのカッコよさだったし、『胸いっぱいの愛を』でのロバート・プラントとジミー・ペイジの絡みは何のかんの言ってもやはり存在感がある。

トータルで考えると、ツェッペリンのコンサートが目の前で行なわれているという夢のような現実に本来、粗(アラ)と思えるようなものも全て帳消しされてしまったと言うことなのかもしれない。
ちなみにこの日の演奏時間は、アンコールの『ミュニケーション・ブレイクダウン』まででおおよそ2時間。次の日は2時間半、チャリティーとして行なわれた広島でのコンサートは3時間半だったようだ。
今考えると、ツェッペリンのコンサート自体は、それほどスゴイものではなかったのかもしれない。しかし、長い目で考えると、記憶に残るコンサートであったことだけは事実である。

■演奏曲目■

-移民の歌
-ハートブレイカー
-貴方を愛し続けて
-ブラックドッグ
-幻惑されて
-天国への階段
-祭典の日
-ザッツ・ザ・ウェイ
-カリフォルニア
-モビー・ディック
-胸いっぱいの愛を
〜ハロー・メリー・ルー
〜ア・メス・オブ・ブルース
〜ハウ・メニー・モア・タイムス
〜ユー・シュック・ミー
〜胸いっぱいの愛を

アンコール:
-コミュニケーション・ブレイクダウン
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