ネタバレ度:★★(3点が全バレ)
満足度:★★★★(5点満点中)
敬称略:
どこの家庭でも起こりえる題材の映画。ややもすると、難しくしすぎてしまいそうな内容だが、堤幸彦監督はサラッと仕上げてしまったあたりに映画監督としての技量を感じた。
東京郊外の一軒家に住む4人家族。父・堤真一と妻・石田ゆり子。高校生の長男と高校受験の長女というありふれた家族。父は、自宅を仕事場にして住宅の建築事務所を営んでいる。妻は、専業主婦。長男と長女は難しい年頃である。
その長男がある日、家に帰ってこないことをきっかけに日常生活が変わる。長男の友達が事件に巻き込まれ遺体で発見される。長男は行方不明となる。刑事が事情を訊きに訪ねてきたりで、長男が事件に関わっていることがだんだん明らかになってくる。事件には、長男を含む3人が関わっているらしい。
マスゴミが家に押しかけて、事態が近所にも知られることになる。マスゴミの取材で長男の失踪は事件絡みとして報道される。報道されることにより残された家族は窮地に追い込まれる。
果たして、長男は加害者として行方不明なのか?或いは、被害者として行方不明なのか?・・・家族の中でもいろいろな思いが錯綜する。
家族の気持ち。
父は、加害者であってほしくないという思いが強い。実際、仕事のキャンセルも起きていたし、家への落書きを含めて嫌がらせの対応も家族を守るためにしなくてはならない。
母は、一貫して息子の生存を第一に考えている。たとえ加害者であろうと、生きていて欲しいとの強い気持ちを貫いている。
長女(妹)は、絶対に加害者であって欲しくないとの思いが強い。間近に迫った名門女子校への受験も含めて、加害者の家の娘では将来は真っ暗であると。
この家族の誰の思いが正しくて、誰の思いが正しくないのかなど誰も何も言えない。残された3人の家族も日々思いは違っているだろう。1時間ごとに正反対のことを考えているかもしれない。
難しい心の葛藤をドロドロすることなく描いているこの映画。たぶん、名作なのだと思う・・・。
■ 予告編:
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