ダブル・ジョパディー / ネタばれ度:★☆☆ 



「ダブル・ジョパディー」が二重処罰の禁止の意味で、一度裁かれた者は同じ事件で二度裁かれる事はないということです。このタイトルの意味が分かってしまったところで、映画のストーリーというか想定についてのネタばれは、ほぼしてしまうわけです。従って、ネタばれしているところからの映画作りは相当難しいので、興味津々で見ました。

「ドライビング・ミス・デイジー」のブルース・ベルスフォード監督は、見事に娯楽サスペンスに仕上げています。やはり人間ドラマを作り慣れている監督の手腕というところなのでしょうか。
ヒロインのリビー演じるアシュレイ・ジャドが事件に巻き込まれていく過程での最初の10分ほどの中で、彼女の妻として、母としての環境、性格も表現しているし、何よりも速いテンポが素晴らしい。しかも、夫殺害の容疑での裁判シーン、刑務所内で事件の真相を把握した後、「ダブル・ジョパディー」という言葉を理解し、「ある決心」をするあたりも、ややもすると人間ドラマの部分に重きを置きすぎてベッタリした展開になってしまうところを、ざっくりと速いテンポで展開させるあたりにやはりベテラン監督の捨ててしまう(カットしてしまう)センスが感じられます。
思惑通り仮出所をはたしたリビーは、保護司のトラヴィス(トミー・リー・ジョーンズ)と出会います。ここからはリビーとトラヴィスの追跡劇が主体となって展開していきますが、アクション・シーンも見ごたえあるし、ラストに向かって進んでいくストーリーもどんどん引き込まれていく感じで全く見ているものを飽きさせません。
すっかり、映画に渋み、重みを出すために出てきたようなトミー・リー・ジョーンズには物足りない気がしないでもないですが、ヒロイン、アシュレイ・ジャドの様々な表情は久しぶりに素晴らしい演技をしていました。思わぬ拾い物をしたような満足感でした。
それと、変な邦題をつけずに原題通りに「ダブル・ジョパディー」というタイトルにしたUIPのセンスが光ります。

105分。監督:ブルース・ベルスフォード
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THERE'S THE RUB / WISHBONE ASH



ウィシュボーン・アッシュの1974年のアルバムです。
ギター・バンドは数多くあれど、ついつい忘れられがちなのがウィシュボーン・アッシュです。とりたててビッグ・セールスしたアルバムがないことと、日本の場合はレコード会社の力が弱かったことがさほど認知されなかった理由だと思います。

彼らのアルバムの中で抜群に水準の高いアルバムはこの「THERE'S THE RUB」です。アルバム・カバーは天才アート集団のヒプノシスが担当しています。アルバムは全6曲で収録時間は45分。どれもこれもツイン・ギターの音色、フレーズがいいし、歌のハーモニー、メロディーも素晴らしい曲ばかりです。オープンニングから最後の曲まで一気に聴いてこそ、このアルバムの持ち味が出るという意味ではアナログ盤よりCDの方が良いという感じがします。
イギリス出身のアーティストの歌声は、ロッド・スチュワートを筆頭に「哀愁」をおびているのが多いのですが、ウィシュボーン・アッシュのボーカル兼ベースのマーティン・ターナーの声もじゅうぶん哀愁をおびており、聴く者の気持ちによっては、悲しくせつなく聞こえる曲も少なくありません。しかも、そこにユニゾンを多用したツイン・ギターの音色ときては、涙がちょちょぎれんばかりです。
哀愁の歌声にギターの音色・・・とくればダイア・ストレイツのマーク・ノップラーを思い出す人も多いかもしれませんが、彼の場合は、バンドとは名ばかりで、本人以外のメンバーは彼のバック・アップ・メンバーとしての役割しか果たしていないので、バンドとは呼びがたいものでした。その点、ウィシュボーン・アッシュはメンバー・チェンジがあったもののバンドとして最後までツインギター・サウンドを追求していた点で大きく評価されるでしょう。
ギター・サウンドへのこだわりが出ている曲として、このアルバムのラスト・チューン「F・U・B・B」があります。約11分のこの曲はボーカルなしでのインストゥルメンタル曲です。当時ボーカルを入れないという試みはプログレッシブ系のバンド以外では大変めずらしいもので、ここにもウィッシュボーン・アッシュのこだわりと自信が感じられます。

このアルバムは、家で聴くのも良し、外で聴くのも良しの全天候型のアルバムですが、ドライブ中に(特に高速道路を運転中)聴く時は要注意です。あまりのギター・サウンドの気持ちよさにスピード・オーバーをしてしまうからです。それほどこのアルバムは聴いていて気持ちの良いものです。
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GRAND FUNK RAILROAD / 1971.7.17 / 後楽園球場


グランド・ファンク(以下GFR)の当時の日本での紹介のされ方は、世界で一番音が大きいバンド。LED ZEPPELINの前座をやり大アンコールでZEPPELINの出番がなくなった。など、勇ましいものばかりだった。デビュー・アルバムと2ndアルバムを聴くかぎりでは、それほどハードな印象を受けなかったが、3rdアルバムとして発売された2枚組ライブアルバムで噂は本当かもしれないと、興味は最大限にアップした記憶がある。それほど、このライブアルバムのできは素晴らしいものだった。

そして、いよいよそのライブに触れるチャンスがやってきた。1971年は2月にBS&T、4月にFREE、6月にはCHICAGOが来日していて、日本のロック元年と呼べるような年であった。GFR来日後はPINK FLOYD、LED ZEPPELINも来日するわけだからまさにロック元年であったのだと思われる。
そのGFRの来日コンサートは、なんと後楽園球場で行われるとあって、期待はますます高まった。今でこそスタジアムでのコンサートは当たり前であるが、GFRの後楽園球場コンサートは史上初と言えるものだったと思う。なにしろ、あのBEATLESでさえ、武道館だったし、GFRの後に来日するLED ZEPPELINも武道館でのコンサートだったのだから、GFRのすごさが分かると思う。
ちなみに当時のスタジアム・コンサートはスタンド席のみで、現在のようにアリーナ席はなかった。ステージは、セカンドベース近辺に作られたので、客席まではかなりの距離があり、今考えるとおおよそ間抜けな感じもするが、当時としては画期的だったのだ。

当日は、前座として、日本の女性ロック・シンガー、麻生レミとカナダのロック・バンド、マッシュマッカーン(ちょうど一発ヒットの『霧の中の二人』というのがタイムリーに流行っていた)がGFRを盛りあげる?はずだった。
しかし、実際にGFRを盛りあげたのは、前座の2組ではなく、自然の気象状況だった。星さえ見えていた空が、マッシュマッカーンの最後の曲あたりで、急に暗雲が立ち込めてきたのだ。そして、マッシュマッカーンの曲が終わる頃には、雷をともなった豪雨となってしまった。
本来であれば、20分程度のインターバルでGFRがヘリコプターで登場。というような演出が考えられていたようだが、30分、40分たっても、GFRは出てこない。そうこうしているうちに、会場内に、中止の噂が流れ始め、にわかに客席が騒がしくなってきた。それまで緊張感のなかった報道陣にやっと活気が出てきて、観客をカメラに収めたりし始める。
そして、1時間を経過した頃、「暴動」という雰囲気が客席に伝わってくる。なんでも、入れない客1200人がゲートをこじ開け侵入しようとしているという話が伝わってくる。イヤ〜な雰囲気が立ち込めてきた時、場内に当時の人気DJ、糸居五郎の声でアナウンスが流れる。「皆さん、グランド・ファンクは必ず、演奏をやると言っています。もうしばらく待ってください」もうこれで場内は一気にヒート・アップ。映画「ウッド・ストック」の一場面のようにどこからともなく「No Rain、No Rain」の声が聞こえ、スタジアム中に伝染し、大合唱となる。

マッシュマッカーンの演奏終了後、1時間半が経過。雨は全く降りやむ様子はないが、ついにGFRの登場となる。1塁側ダッグアウトから見慣れた3人が出てくる、マーク・ファーナーはすでに上半身裸で登場。ドン・ブリュワーはアフロ・ヘアーで長身。メル・サッチャーは思ったより華奢な感じだ。
耳をつんざく、とまではいかなかったが、雰囲気的にはじゅうぶんそんな感じに思えてしまうほどの自然現象による演出効果であった。
演奏は、ライブ・アルバムと全く同じ構成で進んでいく。オープニングは『Are You Ready?』、ハイライトはやはり『Heartbreaker』。会場全体で「ハートブレイカー」の大合唱。そして最後の曲、アニマルズのカバー曲『孤独の叫び』で興奮は最高潮となる。
演奏時間は1時間10分と短かった。しかし、誰一人、不満漏らす者はいなかったと思う。たぶん初めてロックの洗礼を受けたとような感じがしたのではないだろうか。

翌日、スポーツ紙はもちろん、一般新聞でもコンサートは騒動として報道された。もし、天気が良くて普通にコンサートが行なわれていたとしたら、GFRのコンサートはそんなに一般レベルまで話題にならなかったかもしれない。結果的にGFRは、ロック・ファンだけではなく社会をも巻き込んだコンサートを行ったことになったのではないだろうか。
後日談として、その日のコンサートは、感電の恐れがあったので、全てテープによるものだったというようなことが噂になったが、このコンサートに参加した者にとっては、そんなことはどうでも良いことだった。

■演奏曲目■

-アー・ユー・レディ
-パラノイド
-イン・ニード
-ハートブレイカー
-マーク・セズ・オーライト
-T・N・U・C
-孤独の叫び

写真提供:70's Rock 秘蔵写真館 rare pic.
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005.1999.06 / UHM JUNG HWA



オム・ジョンファといいます。韓国音楽に興味ない人にとっては初めて聞く名前だと思います。韓国音楽に興味ある人なら全員知っていると言っても過言ではないほどで、韓国の音楽界では知名度の高いスーパースターです。1999年10月に東京赤坂BLITZで「SuperStar from SEOUL 1999」というイベントが行なわれましたが、この時に日本で初のライブ・パフォーマンスを披露しました。

韓国では、シングル・レコードというのがないので、このアルバムは、1999年夏にリリースされた彼女の5枚目のオリジナル・アルバムになります。日本で韓国のアーティストが紹介される場合、ほとんどが「韓国の○○」と紹介されます。日本進出が大失敗に終わったS.E.Sがデビューした時は、「韓国のspeed」でした。オム・ジョンファが先のイベントに参加したときの紹介され方は、「韓国のマドンナ」でした。この表現が正しいかどうかは実際に見た人が判断する他はないと思います。無理に誰かに例えるのであれば、日本では工藤静香ではないかというのが私めの思うところです。

このアルバムのプロデュースはキム・チャンファンといって、これもまた「韓国の小室哲哉」などと紹介されている人で、韓国の音楽シーンでのキーマンと言える人です。アルバムは収録時間がおよそ45分、収録曲は11曲。いつも70分近くのCDを聴いている私たちには、短いというよりも、ちょうどよい長さのアルバムです。シングルがない代わりに一枚のアルバムの中から3曲ほどのビデオ・クリップを順次発表していくのが、韓国のレコード・プロモーションのおおよその流れです。このアルバムの中からも「モルラ」「FESTIVAL」の2曲がビデオ・リリースされていますが、どちらの曲も全く似ても似つかない作風、仕上がりです。この2曲に限らず、全体的にバラエティとんだ作風の曲が散りばめられています。唯一の共通項はダンス・ミュージックであることでしょうか。
このアルバムがリリースされた99年中期より韓国は日本でいうところの、テクノ、ユーロ両ビートが主流を占めています。このアルバムもそのさなかの発売なので、当然ダンス・ミュージックが主体になっています。ただ、単調なリズムの繰り返しと違って、彼女の曲は、どれもメロディがすごく耳に残ります。彼女の歌い方にどこか哀愁があることも他のダンス・ミュージックと一味違うところといえるのかもしれません。

外国の曲というと英語慣れしてしまっている私たちですが、韓国語で歌う彼女のダンス・ミュージックは必ずや満足のいくアルバムと自信を持ってのお薦めです。
なかなか手にしにくい韓国のレコードですが、タワーレコード、HMV、そして韓国街でちょっと意識して探して見て下さい。損は絶対にありません。日本での価格は、だいたい2200〜2500円ぐらいです。
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ブラック・レイン / ネタばれ度:★☆☆



松田優作の遺作となった「ブラック・レイン」、監督は「ブレード・ランナー」「エイリアン」のリドリー・スコット。出演は松田優作の他に、マイケル・ダグラス、高倉健、アンディ・ガルシア、若山富三郎。
日本のヤクザ抗争にニューヨーク市警の不良警察官がかかわることになり、日本の大阪を舞台に文化の違いの中で日米両捜査官の葛藤と友情を描いた作品。ストーリー的には特に面白味はないのですが、撮影に関しては見どころがたくさんあります。
特に圧巻なのは、大阪市で行なわれたロケ。一般道路上で撮影をするのですが、これには通常、警察に道路使用許可をとります。大阪府警も普通の映画のロケを想定して簡単に許可を発行したらしいのですが、このロケがすごい。白昼堂々の人止め、車止めの大がかりの撮影に、当日の交通は大パニックになったと思われます。その証拠に、追加撮影を行なおうと再度許可を大阪府警にとりに行ったようですが、大阪府警は許可を出さなかったというほどでした。結局、夜の大阪を車で走るシーンは香港で行なわれたとのことです。
大阪での夜のシーンがまた美しく、リドリー・スコット色を出しています。「ブレード・ランナー」で登場する未来のチャイナタウンの映像、色調を大阪の街で再現しています。霧に煙る中、照明が点滅する大阪の街は、いつも馴染んでいる大阪の景色とは全く異質のもので、監督によりこうも景色が違うのかと感心してしまいます。

出演者の中では、やはり遺作となってしまったからではないのでしょうが、松田優作が圧倒的な存在感を発揮しています。彼は自ら、オーディションを受けて出演しているのですが、この作品に対する思い入れが特別あったのでは、と思わせるほどの演技(特に表情)をしています。この作品に松田優作が出演するかしないかで、作品のできはおおいに変わったのではないでしょうか。
他の出演者の中には、ワンポイント出演でガッツ石松、島木譲二なども出ているのですが、日本映画などに出ているのとは違って、監督に(映画に?)何かを引き出されているような感じがします。女優では小野みゆきが出演していますが、彼女などを見ているとやはり身長の高い人はそれだけで存在感をアピールできるのだなと思ってしまうぐらいアメリカ映画に馴染んでいます。

この映画のもう一つのエピソードして、2通りのラスト・シーンが作られたという話が当時ありました。松田優作が死んでしまうラストと生きているラストとです。残念ながら公開されたラストのほうしか見ていませんが、もし事実なら、もう一つのラストもぜひ見たいものです。
1989年。125分。監督:リドリー・スコット。
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