メッセンジャー / ネタばれ度:★☆☆

久しぶりに愉快な日本映画を見ました。
監督は、ホイチョイ・プロの馬場康夫。出演は飯島直子、草?剛。
何でこの映画を面白いと思ったかというとこんなことがまずあげられます。
?家でスカパーのPPV(ペーパービュー)でゆっくり見たから。
?舞台の東京の地名などが全くといいほど私の行動範囲と一致していたから。
以上の要素が面白く見られた原因だと思います。
で、疑問も出てくるのですが、この映画はほとんど東京の中心地を舞台に作られています。しかも地名や道路の名前なども細かくストーリーに関ってきます。ここまで東京ローカルな作りにして、東京以外の人が見ても面白いのでしょうか。テレビの深夜枠でローカル番組としてその地方でのみ人気を博している番組ってありますよね。あの感覚で作っているようですが果たして全国で受け入れられたのでしょうか。
ストーリーは、商社が出資している海外ファッション・ブランドのプレスをやっているバブリーな女が倒産から一転してプータローに。偶然、自転車宅配便の若者のと知りあって人生観を変えていく。と言うたわいもないものです。
しかし、このたわいもないストーリーの中にホイチョイならでは見せ場がたくさんあります。まず、東京のロケハンをよくやっているということ。この映画を見て、東京って綺麗だなぁ、と再認識する人は多いのではないでしょうか。特に自転車宅配便の会社のシーンでの東京タワーをバックにしたローアングルでの絵は大変美しい。このシーンに限らず、ローアングルでのカットが多いのですが、どれも新鮮です。
セリフの中にもホイチョイらしい言葉がたくさん出てきます。一番笑ったのは、バイク便のオニイちゃんが飯島直子を見て「レース・クイーンみたいなオバさんまで引っ張り出してきて・・・」なんてのはなかなか書けるセリフではありません。
ビッグコミック・スピリッツに連載中の「気まぐれコンセプト」の延長にこの映画があるのではないでしょうか。
ストーリー、云々よりも久しぶりに小気味のよい映画に巡りり会えました。
しかし、日本アカデミーを始め、各賞ではこの映画のようなライト・コメディはきっと評価の対象にはならないのでしょうね。目を剥く演技や寡黙な演技をしないと良い作品とは評価されないのが、日本映画の悲しい現実ですからね。
1999年作品。118分。監督:馬場康夫。
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GOODBYE YELLOW BRICKROAD / ELTON JOHN

ダイアナ妃、ゴルチェの葬儀のシーンなどで号泣するエルトン・ジョンの姿をテレビニュースで見るにつけて、不細工に磨きがかかってしまったなぁ、などと年月の経過を感じたりしていました。
先日、レコードの整理をしていたら思いのほか、エルトン・ジョンのレコードが出てきたんで、改めて自分がエルトン・ジョンのファンだったんだなと再認識しました。そして、久しぶりに聴いてみました。良いんですよ、どのレコードも。ちょっと聴くつもりがあれもこれもと、結局、家や車の中で半日近く聴くはめになってしまいました。
数あるエルトン・ジョンのアルバムの中で、ひときわ水準が高いのが、今回の「黄昏のレンガ路」でした。当時は2枚組で発表され、CD化された時も2枚組でしたが、廉価盤になって1枚にまとめられていると思います。
このアルバムは、エルトン・ジョンの才能、センスの全てが凝縮されている、まさに集大成的なアルバムといえるでしょう。お得意のバラードあり、レゲエあり、ロックンロールあり、ダンスあり、インストゥルメンタルのハードな曲ありとバラエティに富んでいます。しかも各作品のクオリティは高いときているのでお薦めできます。
オープニングの埋葬曲からグイグイとエルトン・ジョンの世界に引き込まれていきます。作詞を担当しているバニー・トーピンとのコンビネーションはまさに絶頂期といえたのではないでしょうか。このアルバム以降しばらくして、バニー・トーピンとのコンビを解消してからは、ロックンロール志向へと音楽が変わっていきます。しかし、同性愛者として、QUEENのフレディ・マーキュリーのエイズでの死亡は彼に大きなショックを与えたようでした。エイズでの死に対して真剣に恐れた彼は、自分の集大成として、自分の楽曲をオーケストラとの共演として残そうという試みにでます。
そして、全世界に向けて衛星中継でオーケストラとの共演コンサートを中継もします。その頃から彼の作品は再び、美しいバラードが中心へと変わります。結局、彼のエイズ感染の真偽は分からないままです。しかし、彼が真剣に死というものに直面したことは事実のようです。
この「黄昏のレンガ路」はそんな彼が、まだ死というものなど考えもせずに、才能のあるままに突っ走っていた頃の華やかき時代の1枚です。全ての作品がシングルカットとになってもよいほどポップでしかも研ぎ澄まされています。しかもアルバム全体をトータル・コンセプトして考えても、しっかりと構築されています。
まさに20世紀の名作の1枚であると確実に言えると思います。
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スピッツの曲は意識しないで聴いていても自然に耳に入り込んで、しかも記憶に残っているから不思議です。何回か雑誌でその姿を見たことはあるのですが姿は全く記憶に残っていません。かと言って特別に容姿が悪いと印象もありません。曲は記憶に残るが姿が記憶にないのです。洋楽で言うところのエルトン・ジョンやクリストファー・クロス。邦楽の南 佳孝や槙原敬之などのように曲は良いけれど容姿が悪いというのとは大きく違うわけです。
アレンジし過ぎの音楽オン・パレードの中でメロディーを重視して、アレンジもメロディーに合ったサウンドにしているところがこのグループの一番良いところではないかと思います。ああもしたい、こうもしたいと音を重ねるだけの、いわゆる「壁を塗るような」アレンジではなく、「柱や土台を築いていく」アレンジをしているところが新鮮です。加える判断よりも捨てる判断の方が音作りにおいては難しいので、このグループのアレンジ力はかなり高いと思います。
更に歌い方も好感が持てます。日本のシンガーの多くは、例えば「誰も来ない」という歌詞などの場合、サザン・オール・スターズなんかであれば「どわぁれもぉ くぅおぬぁい」←(ちょっと極端)なることが多く、聴いてて吐き気すらしてきます。日本語なのに英語発音の「r」が入っているような歌い方です。それがこのグループにはなく、日本語が大変聞きやすいというのも、大きな特徴と言えるのではないでしょうか。
このアルバムは、ベスト盤ですが、収録時間も60分以内とちょうど良いものになっています。彼らにしてみればもっと入れる曲はあるのでしょうが、ここでも「捨てるセンス」が光っています。古い昔から「日本のビートルズ」と言われたバンドは数多くいますが(チューリップもそうでした)、いずれも過大評価しすぎで本家のビートルズに申し訳ないようなバンドしかいませんでした。
今更、「日本のビートルズ」などという古臭い形容詞は使わないのでしょうが、スピッツはそう呼ばれてもじゅうぶんに納得のできる数少ないグループのような気がします。
クズみたいなベスト盤が数多く氾濫している中で、このアルバムは本当の意味での「ベスト盤」であると言えるでしょう。
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