BACK ON THE BLOCK / QUINCY JONES

1989年にリリースされたクインシー・ジョーンズのこのアルバムに参加したミュージシャンは、レイ・チャールズ、チャカ・カーン、TAKE6、エラ・フィッツジェラルド、アル・ジャロウ、ジョージ・ベンスン、マイルス・テイヴィス、ジョージ・デューク、ハービー・ハンコック、テヴィン・キャンベル、バリー・ホワイトなどなど超豪華絢爛。そう、このアルバムはクインシー・ジョーンズの80年代の仕事総決算的なアルバムだ。クインシーの才能を引き出すために豪華なミュージシャンがバック・アップしてくれている。
このアルバムは世界の音楽シーンにおいて微妙な時期でのリリースだった。89年というこの時期にアルバムをリリースしたことは80年代の総括という意味の他にもう一つの意味があったかもしれない。それは、オリジナル楽器での生音とシンセサイザーでの擬似音の境目となる時期がちょうどこの頃だったからだ。この時期以降の音楽はシンセサイザーとコンピュータによるサンプリングが中心となってくる。そうギターがなくてもギターの音を出せる。ストリングスがなくてもストリングスの音が出せる。そんな時期に完全突入する直前が89年の頃だった。
クインシーは、このアルバムで生音とサンプリングを見事に調和させている。どの音が生音なのか、サンプリングの音なのか、全く分らない。ややもすると無機質になりがちなサウンドを超豪華なゲスト・ミュージシャンの参加により調和をとっている。
アレンジの方も完璧だ。コンピュータ音楽の最大の欠点はアレンジにある。どのような音をも再現できるのでアレンジャーは面白いように音を埋めていく。まるで壁を塗りこめていくような手法なので風通しがよくない。
クインシーのアレンジは、柱や鴨居や敷居をちゃんと作り、全体感を見ながら家を建ていく感じで日本建築のような手法で風通し、住み心地を配慮したものになっている。だから聴いていて心地よい。
アルバムの内容は、80年代音楽の全てエッセンスが散りばめられている。ジャズあり、バラードあり、アカペラあり、ラップあり、R&Bありでバラエティに富んでいる。ボーカルや楽器の演奏を聴いて誰なのか探り当てるだけでも面白い。
このアルバムをミレニアムの今聴いても少しも古い感じがしないのは、クインシーの才能のすごさもだが、90年代は意外に音楽という面では個性を残していなかったのでは?と考えさせられもしてくる。
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ミッション・インポシブル2 / ネタばれ度:★☆☆

数ある「Part2」映画で前作を上回る映画は数少ないし、同じレベルすらあまりない。「エクソシスト」「ターミネーター」「エイリアン」などがその数少ないうちに入るかもしれない。
この『ミッション・インポシブル2(M:I2)』は、その数少ない中に入れていいだろう。前作は、ブライアン・デ・パルマ監督が手がけ、出演陣もズラリと曲者を揃えて大ヒットした。
今回は、主演に前作同様トム・クル−ズ。監督には「香港ノワールの旗手」などという紹介が必要もなくなったジョン・ウー。
ジョン・ウーは「フェイス/オフ」で完全にハリウッド映画の商業監督に仲間入りした。彼の香港映画時代のバイオレンス、アクション・シーンの数々がトム・クルーズという大物俳優を前にどの程度まで主張できるのか個人的には非常に楽しみにしていたのがこの映画だった。
映画はテレビのスポットでお馴染みのトム・クルーズのロック・クライミングのシーンから始まる。このシーンがノー・スタントでトム・クルーズ本人が演じていることを事前に大々的にプロモーションしていた映画会社の作戦は見事に的中し、見ている側はその壮大な景色に呑みこまれてしまう。そして、お馴染みのテーマ曲とくれば、開始早々10分程度でこの映画に対しての期待感はおおいに高まってしまう。
ストーリーは製薬会社が絡んだ細菌兵器とその解毒剤をめぐっての敵組織との対決という大変シンプルなものだ。このシンプルさがアクション映画には必要なのかもしれないと改めて考えさせられるほどシンプルだ。
このシンプルな中でジョン・ウー監督は彼のポリシーをおおいに見せてくれる。敵地に乗り込むトム・クルーズの忍者ばりの動きや武器を持たずに素手でのカンフーもどきアクションは「マトリックス」など足元にも及ばないほど圧巻だ。扉が爆破されてスローモーションで炎が燃えさかる中を舞う白い鳩。そしてゆっくり姿をあらわすトム・クルーズ。このシーンなど完全に香港時代のジョン・ウーの世界でチョウ・ユンファが出てくるのでは?と錯覚を起こしそうだった。
最後近くのオートバイでの追撃シーンから1対1の対決シーンでも武器はあまり使われない。ここにもジョン・ウーのこだわりが見え隠れする。
典型的な娯楽型のハリウッド映画の中でここまで自分の個性を出し切ったジョン・ウーにとって、この映画はハリウッド監督として完全にその位置を固めることができた作品と言えるだろう。
今後、ミッション・インポシブルは「007」のようにシリーズ化されると面白いかもしれない。「ボンド・ガール」には「M:Iガール」として美女を配役し、監督もその都度替えていく、テーマ曲もいろいろなアーティストでニュー・バージョンを担当させる。シリーズ化の最大のポイントは最大のはまり役になりつつある、イーサン・ハント役はトム・クルーズにしばらくやって欲しいものである。
2000年作品。124分。監督:ジョン・ウー。
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韓国エンターテイメント三昧 / 田代親世

映画「シュリ」がそこそこヒットしたせいもあってか、韓国のエンターテイメントが以前よりも注目されているようだ。と言ってもそれは以前の20点に比べて30点になったかどうかという程度でマイナーであるという点では変わりない。
韓国エンターテイメントの中で音楽についてはHIP HOP、RAPの水準はかなり高いことについてはことあるごとに言ってきた。その音楽を含めて韓国のエンターテイメント「入門」といえる本が出版されたので紹介したい。
はっきり言って、この本は大変よく取材されているし素晴らしい出来に仕上がっていると思う。ただ惜しいのは「韓国」というブランドのせいかもしれないし、出版元の事情もあってかあまりにも宣伝されていないことだ。私めがこの本を手にしたのも全くの偶然だった。八重洲ブックセンターに他の本を探しに行った時にカミさんが「こんな本あるよ」と見つけてくれたのだ。本を手にしてペラペラとめくってみるとなかなか面白そうだった。買ってみるかと値段を見ると2000円。売れないことを前提にしての値段設定かと思ってしまうほどの微妙な値段だ。更に残念なことに、友人知人に紹介するも、ほとんどの書店に置いていなかった。実際、私めも近所の書店や大型書店などに行ってみたが結局、八重洲ブックセンター以外で目にすることはできなかった。
「韓国」に対するマイナーさを実感させられる結果だった。2002年ワールドカップの共催。日本文化の開放。と言っても日本の韓国に対する関心度は相変わらず低いということだろう。
しかし、この本自体は大変素晴らしい本であることは事実だ。著者の田代親世(たしろちかよ)さんはテレビ局のアナウンサーから独立してフリーアナウンサーをされている方だ。韓国エンタに嵌る前は、香港エンタに嵌っていたそうだ。このての本の面白い面白くないの決め手は書き手の意気込み、息づかいが感じられるかにかかっている。その点でもこの本はじゅうぶんに合格だろう。著者の興味がまだ発展途上な分、貪欲なエネルギーが感じられる。エネルギーだけでなく、著者のフィルターを通しての韓国エンタの現状が読む側に紹介されている。アナウンサーとしてのキャリアから人に伝えることの重要さが自然に出てくるのかもしれない。単なる事象の紹介だけでなく、著者の感じる韓国エンタについても要所要所に語られているので、韓国エンタに興味のある人にもこれから知ってみたいという人にもどちらにも満足感を与えることのできる丁寧で躍動的な一冊である。
目次から
第1章 韓国歌謡界のアイドルたち
★H.O.Tインタビュー
★アイドル紹介
ジェクキス / 神話 / god / ユ スンジュン / チョ ソンモ / Y2K
テサジャ / NRG / S.E.S / FIN.K.L / BABY V.O.X / オム ジョンファ
イ ジョンヒョン /キム ヒョンジョン / パク チュン
★SMエンターテイメント総プロデューサー、イ スマン氏インタビュー
★韓国芸能界あれこれ
第2章 銀幕、お茶の間のスターたち
★スターインタビュー4連発!イン ソウル
アン ジェウク / イ ビョンホン / リュ シウォン / ユン ソナ
★スター紹介
ハン ソッキュ / チャン ドンゴン / チョン ウソン / イ ジョンジェ
チャ インピョ / パク シニャン / キム ミンジョン / シン ヒョンジュン
ペ ヨンジュン / キム ソックン / ソン スンホン / チャ テヒョン
ハン ジェソク / ジャン ヒョク / チェ ミンス / パク チュンフン
チェ ミンシク / アン ソンギ
チェ ジンシル / シム ウナ / チョン ドヨン / コ ソヨン
キム ヒソン / イ スンヨン / キム ヘス / チェ ジウ / ソン ユナ
チュ サンミ / キム ハヌル / キム ヒョンジュ / イ ナヨン
コ ホギョン / カン スヨン
第3章 『シュリ』がやってきた!
★『シュリ』100万人突破パーティー
★チェ ミンシク、キム ユンジン インタビュー
★『シュリ』のあとに・・・シネカノン代表、李鳳宇氏インタビュー
★韓国映画選
ラブコメディ--チム / 日が西から昇るなら / 敗者復活戦
コメディ------スパイ リ チョルジン
メロドラマ----ラブ / 美術館の隣の動物園 / カラ / 情事 / インシャラ
SFX大作-------銀杏の木の寝台 / ザ・ソウルガーディアンズ<退魔録>
その他--------情け容赦なし / テルミーサムシング
第4章 テレビ局潜入レポート
★「SBS人気歌謡」見学
★「真夜中のTV芸能」制作裏話・芸能取材に同行!
第5章 韓国のテレビドラマ
★韓国ドラマの基礎知識
★ドラマ王国MBC訪問
第6章 韓国ミュージックビデオ鑑賞のすすめ
★韓国のミュージックビデオ
おまけ
★日本で、韓国で
あとがき
目次だけ書いてみても読み応えを感じることができると思う。また一人韓国に関して注目、注意しなくてはならない人が登場してしまった。
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