ELTON JOHN / 1974.2.2 / 日本武道館
1974年のコンサートはエルトン・ジョンの2度目の来日公演だった。この年の私は、1月にシルバー・ヘッドを見てマイケル・デバレスの期待はずれの容姿に落胆し、期待していなかったロリー・ギャラガーではその熱きステージに圧倒された。そして武道館のムーディー・ブルースではレコード通りに演奏してしまうプログレの力量に翻弄されてと新年早々ロック漬になっていた。更にはエルトン・ジョンのコンサートの後にはロッド・スチュワートのフェイセスのコンサートも控えているというロック小僧にとってはまさに狂喜乱舞の年だった。
この年は、原宿にやっと人が集まり始めた頃で吉田拓郎などFOR LIFEレコードのミュージシャンが集まっていた「ペニー・レイン」という喫茶店・スナックが話題になっていた頃だ。
我らブリティッシュ・ロック小僧にとっては表参道、伊藤病院の路地に「HELP」というトンガリ・ファッションの店が集まった集合店舗が話題だった。その中にあった「SCANDAL」。この店の服はサテンの服から豹柄、ロンドン・ブーツ、ツギハギジーンズとまさにブリティッシュ・ロック一色のデザインでロック小僧にとってなくてはならない店のひとつだった。
エルトンの2度目の来日で名作『黄昏のレンガ路』は来日記念盤としてリリースされた。当時のエルトンはT-REXやDAVID BOWIEと並んでグラム・ロックの代表格とされていたのでこの「SCANDAL」の洋服を買ってコンサートに向かったロック小僧も数多くいたのだった。
コンサートは、来日記念盤の『黄昏のレンガ路』からのレパートリーが主軸となり過去のヒット曲を散りばめたものでエルトンのコンサートの中でも最もクオリティの高いコンサートだったと後まで言われる素晴らしいものだった。
場内が暗転して響き渡る奥深いシンセサイザーの音、その瞬間『黄昏のレンガ路』のオープニングにもなっている「Funeral For A Friend( Love Lies Bleeding)」であることはすぐに分かった。前半部はほとんどインストルメンタルで後半にググッと盛り上がるこの曲で今回の来日公演の素晴らしさはすぐに予測することができた。大袈裟ではなくこの1曲でこの日のコンサートの良し悪しは決まったといってもいいだろう。
盛り上げたとたんに2曲目の『僕の歌は君の歌』そして『Candle In The Wind』とバラードで攻め込めあたりも心憎い選曲だ。
そして圧巻は何といっても『Bennie And The Jets』単純なリズムにエルトンのシャウト気味の歌とシンセの掛け合いが絡むこの曲は会場を最高潮の興奮に包み込んだ。
コンサートはその後もアップ・テンポの曲とバラードとを上手く緩急つけて最後の『Crocodile Rock』、アンコールの『Saturday Night's Alright For Fighting』へとなだれこむ。当時のコンサートでは当たり前だったハイテンションでコンサートは終わったのであった。
このコンサートのサポート・メンバーはよく覚えていないのだが普通よりも長めのタムタムを使っていたドラムのナイジェル・オルソンは確実にいたし、他のメンバーもアルバム『黄昏のレンガ路』に参加したメンバーだったように思う。ソロ・アーティストのコンサートの場合、アルバムに参加したメンバーがそのままコンサート・ツアーに参加する時は間違いなくクオリティの高いものなっていたようにも記憶している。だからコンサート日程が発表されると、どのようなメンバーで来日するのか非常に興味があったものだ。
エルトンのコンサートは私の記憶の中でも素晴らしかったし、当時のコンサート・レビューでも評価は高かった。私が見たのは東京公演2日目だったのだが、残念なことに前日の初日のコンサートでは曲数が大幅に少なかったと聞いている。当時のいろいろな外タレの来日公演を思い出してみると、初日はいろいろな意味でのゲネプロ的な意味あいのコンサートとしか考えられないような手抜きがあったのも事実だ。実際にチケットが売り切れるのは最終日が一番最初、初日は一番最後に売り切れていたようだ。
エルトンのコンサートは幸いにして良い公演日に出会えたのでラッキーだった。
■演奏曲目■
-Funeral For a Friend(Love Lies Bleeding)
-Your Song
-Candle In The Wind
-Hercules
-Rocket Man
-Bennie And The Jets
-Daniel
-This Song Has No Title
-Honky Cat
-Goodbye Yellow Brick Road
-The Ballad of Danny Bailey(1909-1934)
-Don't Let The Sun Go Down On Me
-Elderberry Wine
-I've Seen That Movie Too
-All the Young Girls Love Alice
-Step Into Christmas
-Crocodile Rock
アンコール:
-Saturday Night's Alright For Fighting
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DAVID BOWIE / 1978.12.12 / NHKホール 2001/12/15
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ELTON JOHN / 1974.2.2 / 日本武道館 2001/11/17
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EMERSON LAKE & PALMER / 1972.7.22 / 後楽園球場 2000/11/15
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World Hits? of Southern All Stars / 関口和之&砂山オールスターズ

サザン・オールスターズはあまり好きじゃない。というよりも嫌いなほうの部類に入る。理由はただひとつ、桑田佳祐が歌う歌詞が聞きとれないからだ。楽曲のクオリティは高いと認めているだけに残念だ。もっと普通に歌ってくれれば好きかもしれないと常々思っていた。
そのサザンのメンバーの一人である関口和之がソロ・プロジェクトを発表した。関口和之&砂山オールスターズ。いかにもオヤジ・ギャグなバンド名だ。
内容はというと一連のサザンのヒット曲をカバーしたアルバムだ。
ただ単にカバーしただけではなく、それぞれの曲を世界ワールド・ミュージックにアレンジしているところにまず興味がひかれた。
日本、インド、アフリカ、ヨーロッパ、ブラジル、ジャマイカ、キューバ、アメリカ、ハワイの代表的なサウンドにサザンの曲を乗せてアレンジしている。そのサウンドはBGMとしても気持ちが良いし、各曲をじっくり聴いてもアレンジのセンスと演奏力の高さには感心させられる。
80年代初頭にWATER MELONなども同様のサウンドに挑戦していたが、演奏力という点ではこのアルバムのほうがはるかに高い。
やはり音楽にパロディ的な要素を持ち込むにはそれなりの演奏力が必要ということを改めて認識させられるアルバムでもある。
ただ、このアルバムがマーティン・デニーに代表されるエキゾティック・ミュージックのレベルかというと、それは微妙なところであくまでも趣味の域での良作とするのが妥当なところだろう。
参考までに収録曲とそのサウンド(アレンジ)の源となる地域名を記してみる。
01.涙のキッス(a cappella)
02.MISS BRAND-NEW DAY:kingston/JAMAICA
03.YaYa(あの時代を忘れない):Hawaii/USA
04.HOTEL PACIFIC:Havana/CUBA
05.愛の言葉〜Spritual Message〜:SantaMarta/COLOMBIA
06.涙のキッス:RioDeJaneiro/BRAZIL
07.みんなのうた:California/USA
08.希望の轍:Mississippi/USA
09.南たいへいよ音頭:PortOfSpain/TRIDAD AND TOBAGO
10.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇):Kerama/JAPAN
11.真夏の果実:Douala/CAMEROON
12.クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る):Dublin/IRELAND
13.忘れられたBIG WAVE〜Outro:Ibiza/SPAIN-UNIVERSE
14.TUNAMI(souvenir):SanDiego/USA
という全14曲世界一周の旅だ。
2001年9月のニューヨーク・テロ事件以来、海外旅行に出かける人の数は少なくなっているようだが、車の中、家の中でこのアルバムを聴きながら世界旅行に夢をはせるというのもなかなかオツな余暇の過ごしかたかもしれない。
ちょっと上質なワールド・ミュージックをいろいろなシチュエーションでぜひお試しあれ。
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気まぐれコンセプト / ホイチョイ・プロダクション

ホイチョイ・プロダクション、この名前を聞くと80年代後半のバブル景気を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか。
ホイチョイ・プロダクションは雑誌の編集、書籍の企画にとどまらず、映画「私をスキーに連れてって」などもプロデュースしたバブリンな企画集団だ。そのホイチョイ・プロダクションの原点となるであろう「気まぐれコンセプト」という漫画は今でもビッグコミック・スピリッツで毎週2ページ見開きで連載されている。
ここで紹介する「気まぐれコンセプト」単行本の初版が昭和59年(1984年)となっているから実に17年間以上連載が続いているモンスター作品だ。しかし、単行本化されているのは何故か最初の1巻しかない。理由は全く分からないがファンとしてはとても残念なことだ。
たった2ページのためには単行本がないから毎週買おうかと言う気も起きず、結局、毎週立ち読みで済ませているのでファンとしてはなかなか複雑な心境だ。
「気まぐれコンセプト」の物語の舞台となるのは広告業界。主人公、ヒライは白クマ広告社という広告代理店営業部所属の営業マンだ。そして彼の上司のクマダ部長、クリエイティブ・ディレクターのマツイ、ヒライが担当するスポンサー、カブト自動車のザイゼン部長、ライバル広告会社、荒鷲エージェンシーのやり手営業マンのカヤマなどが常連の登場人物だ。
この漫画が面白いのは、広告業界を題材にしたエピソードを取り上げることにより、その時代の流行の傾向などが分かることだ。ホイチョイ・プロダクションのスタッフは大手広告代理店に大勢の知り合いがいるらしくかなり取材をしているようだ。実際、作品で取り上げられたエピソードの持ち主本人に何人も会ったことがる。
この漫画を見ることにより今風(当時)の女の子たちの動向は間違いなく把握できるので、最近の女の子は分からん、とお嘆きのオッサン諸君にはぜひとも立ち読みをお薦めする。
この単行本の発売された1984年はまさにバブル時代に突入する直前なので、描かれている時代背景や街並み、人のセリフに勢いが感じられ、日本がバブル景気→バブル崩壊へと進んでいくことを感じながら読むのも面白いかもしれない。
単行本は、広告業界のナンセンスぶりをナビゲーターが紹介するところから始まる。そして登場人物の紹介があっていよいよ作品集に入る。作品の括りは4月から3月までのいわゆる年度枠で構成されている。広告会社の1年間を各月の日記のような想定で4コマ漫画を主体に描いている。
話の内容は先も書いたように広告業界、広告代理店という独特の世界観の中での日常を紹介しているものだ。良くも悪くも目立つ広告マンのいい加減さや悲哀が面白おかしく描かれている。この手のパロディめいたものは瞬間的に書くことはできても17年も続けることは相当困難なことだと思う。毎週毎回、作品に取り上げるに値するネタを探すのだけでも困難であろう。17年も連載していると週によっては期待はずれのものももちろんある。しかし、17年間を通して見ると及第点(もちろん個人的な趣味でということ)は保っているから凄い。
21世紀なって最初の1年も終わりに近づいたが、ホイチョイ・プロダクションがこの「気まぐれコンセプト」にどのような完結をつけるのかは大変興味がある。
何はともあれ、ビッグコミック・スピリッツを立ち読みすることを重ねてお薦めする。
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