出入り禁止と福の死
福は逝ってしまったもののカミさんにはもちろんのこと私にも大きな影響を残してくれた。
福がやって来たことにより私のネット・ライフも大きく変わった。今まで偶然にしか見たことがない柴犬に関してのサイトを見回り始めた。そんな中、遭遇したのが「柴犬リング」。柴犬仲間のWEBネットワークだ。たくさんあるサイトの中で私が最初に訪問したのは『大好き!柴犬ももこの部屋というサイトだった(「ももことマックスの部屋」とも言う。「巻尾組」では水芸師・百太夫で入組している)』。このサイトを訪ねた理由は福と生まれが2ヶ月しか違わなかったからだ。2ヶ月先輩だといろいろ参考になるかもしれないと思ったのだ。
予想通り掲示板を始め日記など子犬初心者の私には参考になることばかりだった。掲示板にもお邪魔して書き込みさせてもらった。その中の書き込み仲間のサイトにも2軒お邪魔してそちらの掲示板にも書き込みさせてもらったりした。
福は風邪気味だったので、そんな様子を書いたりしていたが、福は途中から様子が一転して入院することになった。いろいろアドバイスをしてもらっていたので入院したことを書き込み報告した。あまり楽しい話題でなかったので「暗い話ばかりですみません」と加えた。最初に訪問した掲示板だったし、他の2人のサイト主宰者も掲示板に来ていたようなので見てもらえると思ってそこの掲示板だけに記しておいた。というよりもつらい内容を何度も書く気にならなっかた。「暗いなんて気にしないで下さい」という暖かいレスをいただいたが、書き込みは少し自粛モードにしていた。
そんな矢先にそこの管理人から一通のメールが届いた。
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宮崎さん
大好き!ももこの部屋管理人のてーちゃんです。福ちゃんの病気は気の毒に思いますが、私たちの掲示板を使って、気が滅入る話題を書き込むのはやめてください。失礼とは思いましたが、掲示板の宮崎さんの書き込みは全て削除させていただきました。
本来、そのような内容は、ご自分のホームページに掲示板を設定して、メッセージされるのが筋と思います。サリーも私も出来るだけ誠意を示したと思いますが、このあたりが限界です。
今後、この話題に限らず掲示板に書き込みをしていただくことをお断りします。別に、趣味の世界でホームページを運営しているだけなので、ボランティアをする気はありません。
余計なことですが、病状から察して、残念ですが、福ちゃんが回復することはかなり難しいと思います。ブリーダーが山口県ということでしたが、おそらく、運搬されていたときに何らかの感染症にでもかかった可能性があります。
病状から察するに、細菌の毒素が神経を冒しているものと思われます。要するに、病気持ちの子犬を売りつけられたということです。ショップ(提携している病院も)もその心当たりがあるので、治療費を無料にしているのでしょう。生まれて間もない子犬を遠路はるばる運搬するなどは、子犬にかなりのストレスがかかると容易に想像されます。そういう意味でショップの信頼性が疑われます。このあたりのことをショップに追求しても誠意ある対応なり、回答は得られないでしょう。不景気なので、なんでもありなのでしょう。
かなり厳しいことを書きましたが、取り繕ったことを書いても仕方ないので、そのまま書きました。失礼をお許しください。
Mon, 14 Jan 2002 02:24:49
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ちょっと驚いた。だったら掲示板上で言ってくれても良いのになぁ、とも思ったが個人サイトの決定権は主宰者にあるからこればかりはどうしようもない。掲示板を覗いてみると私の書き込みは全て削除されていた。
以前にも書いたことだが、インターネットの空間は路上生活者に似ている部分があると思う。だからメールの秘匿・秘密性など全くあてにならないし。ネット上の著作権など主張しても閲覧者のモラルに任せるしかない。自分のサイトに気にいらない訪問者が来たりしても仕方ない部分もあると思う。もちろん掲示板に書かれることも自分にとって楽しいことばかりや気にいることばかりではないと思う。そういうことを全て受け止めてこそのサイト管理だと思っている。
個人サイト開設は生き物を飼う姿勢にも似ている部分もあるのではないかとも思っている。
出入り禁止に関しては、先に書いたが主宰者が決めることなので私としてはどうしようもないので、一応お詫びのメールを出して、以後のコミュニケーションを絶った。
ただ、出入り禁止通達はともかく、後半部分の誰もがまず考えるであろう陳腐な推理については余計だったかなと思うし大きなお世話でもある。「要するに、病気持ちの子犬を売りつけられたということです。」とあるが、福の死後、同様の指摘をするメールもいただいた。しかし、それを決めることは誰もできないのではないだろうか。
冗談半分で趣味は訴訟、などとウソぶいている私もそんなことは当然考えているわけだ。ペットショップの問題点は指摘されるまでもなく多くのマスコミで取り上げられている。しかし、全てのペットショップが悪いと誰が言えるだろう。ブリーダーの良し悪しも同じだ。
極端な話だが韓国では犬を食べる習慣が残っている。だから韓国人に愛犬家がいないかといえば、いないわけなどあろうはずがない。同様な理屈がペットショップについても私の中では成り立つのだ。
私は福に関して、ペットショップの対応、獣医師の対応など全てを自分の目と耳で確認してきたつもりだ。確かにいろいろと悪い憶測をすることはできなくはない。しかし、福に関わった人々は私の中では全ての人がOKだった。
今後、福の死に関しての対応をどうするかカミさんとじっくり話し合った。そして考えられるであろう全てのケースと自分の考えを言った。そして我々夫婦が出した結論は、たった2.5kgの福が苦しい思いをした代償として福は皆んなに愛されてあちらの世界に行った。と思うことにした。
自分の休みの日にまで様子を聞くために私の家に電話してきたり、福の死を獣医から聞いて涙ながら電話で謝ってきたペットショップの女性。苦渋の選択を覚悟しながらの私たちにたくさん説明をしてくれて最後まで治療してくれた獣医師夫妻と看護婦さんたち。私たちはそんな彼ら彼女らに感謝こそするが何の恨みもない。
そして感謝しなくてはならないのが、メールや掲示板への書き込みをしてくれた多くのわんちゃん飼い主の皆さんだ。その方たちはわんちゃん飼い主の先輩ばかり。福が病気になった過程(ペットショップやブリーダーの在りかたなど)について当然何らかの意見を持っていたと思う。しかし、その意見を披露することもなく福のことで心を痛めてくれ、私たちをも激励してくれた。そんな優しい気持ちに触れたことも含めて、福は短い生涯だったが、良い人だけにめぐり会えたと思っている。
私はものごとの例えを数字に置き換えてする悪い癖がある。今回こんなことを思った。
人間は大きく分けると2種類の人がいる。「0」の座標軸を境に「+」と「−」。この場合の「+」「−」はマークの違いであって、良い悪いという意味ではない。
今「+1」の人と「-1」の人、そして「+100」の人がいる。「+1」の人と「-1」の人は「0」を境に絶対値で「2」の距離だ。「+1」の人と「+100」の人とでは絶対値で「99」の距離がある。
絶対値「2」の距離の2人が同類かといえば、これは違うような気がしてならない。確かに距離は近いので同類と錯覚しやすいが、付いているマークが違うのだ。「+100」の人とは遠い距離だが付いているマークは一緒だ。距離は離れていても「+1」と「+100」の人は最終的には分かり合える2人なのだと思う。
「0」の座標軸を「犬(柴犬)好き」と考えるとどうだろう。「犬好き」ということで近い距離だとますます錯覚が起きてしまうのではないだろうか。
このように考えると出入り禁止通達者は私たち側の人でないということだろう。私たち夫婦が生きていく上で全く関わる必要もない人なのだろう。
たった79日間しか人間世界にいられなかった福は、私たち夫婦の絆を確実に深めてくれたし、私自身にもいろいろな宿題を残してくれた。本当に感謝している。
そして、この通達者夫婦も愛犬家であるという事実も認識しなければならない。いろいろな愛犬家が存在するものである。
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ハイ・クライムズ / ネタばれ度:★★☆

好みの美人女優を見ているだけでそこそこ満足できる映画があるというのは嬉しいことなのか悲しいことなのかなかなか微妙なところだ。『ハイ・クライムズ』はまさにその典型的な映画かもしれない。
法廷を舞台にした映画はそれなりに面白くなってしまうのもこの映画が救われているところかもしれない。しかも軍事裁判となると日常の裁判とはルールも違うのでその違いも面白そうに見えたりもする。
敏腕女性弁護士、クレア・キュービック(アシュレイ・ジャド)は夫トムと子作りを目標に私生活では平凡な女として過ごしている。しかし、クリスマスの日、街なかでいきなり大がかりな武装集団に包囲され夫は身柄を拘束されてしまう。武装集団は警察だった。夫の名前はトムではなくロナルド・チャップマン。容疑は脱走兵。しかも12年前にエルサルバドルで民間人9人を虐殺したという容疑までかけられている。
夫が自分に隠し事していたことに大きな動揺を禁じえないクレアであったが、面会での夫の態度を見て、この冤罪に真っ向から立ち向かう覚悟をする。軍事裁判という特殊な裁判に挑むため元海兵隊の弁護士だったチャーリー・グライムズ(モーガン・フリーマン)に協力を求め、軍隊という巨大な組織に挑んでいく。しかし、相手の妨害工作は想像以上に大きい。
映画はテンポ良く見ていて飽きることもなく結末までたどり着く。しかし、見終わった後に何も残らない。けっして面白くないわけではないし、むしろ面白いほうの部類に入るのではとも思う。でも、何かが不満なのだ。あまりにむスムーズに進行しすぎるからだろうか。
などと考えていたら、何も残らない理由が分かった。それは、もっとインパクトのある法廷映画と比べてしまっているからだった。まず、この映画を見てすぐに思ったのは、ジェシカ・ラング主演の『ミュージック・ボックス』をまた見たいと思ってしまった。更には、キャシー・ベイツ主演の『黙秘』までまた見たいと思ってしまったのだ。
これは映画にとっては致命的なことではないだろうか。例えば、音楽でカバー曲を聴いて「うまいなぁ」と思いながらもオリジナル・シンガーの同名曲を聴きたくなってしまうのと同じだ。ちょっと小腹が空いたのでちょっとオヤツを摘んだらもっとお腹が空いた・・・のにも似ているかもしれない。
本格的な法廷映画、戦争軍事映画がたくさん溢れていることが、この映画をサラッと軽いものにしてしまっているのかもしれない。そういう意味ではちょっと気の毒な映画かもしれない。
2002年公開。115分。監督は、『青いドレスの女』『母の眠り』のカール・フランクリン。
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