
言わずと知れた大御所女性シンガー、ダイアナ・ロス。モータウン時代のシュプリームスを経てのソロ活動だけでも数え切れないほどのアルバムをリリースしていることだと思う。オリジナル・アルバムだけではなくベスト盤だけでもかなりの数が出回っているのではないだろうか。
数多いアルバムの中で1枚を挙げるのであればこの『The Forth Behind The Power』を迷わず選ぶことができる。リリースは1991年。
日本でのダイアナ・ロスの人気は大きく分けて2通りの世代に分かれると思う。50才台以上の人でモータウン時代のダイアナ・ロスを知っていてマービン・ゲイとのデュエット・アルバムをこよなく愛している人たち。
ソロ転向後の活動の中で80年代後期のテレビ・ドラマ『想い出に変わるまで』のテーマ曲として使われた「IF WE HOLD ON TOGETHER」以来のファンでこの人たちで30才台中ごろ以上の人たち。おそらくこの2タイプではないだろうか。
テレビの影響というのは大きいもので本人の意思に関係なく聴く者に大きな影響を与えてしまう。ダイアナ・ロスにしてもまさかディズニー映画『リトルフットの大冒険』のテーマ曲として使われた「IF WE HOLD ON TOGETHER」が日本での自分の代表曲になるとは夢にも思わなかっただろう。
事実、彼女自身この曲に対してあまり思い入れもなかったようで、この曲が大ヒットしたすぐ後の来日コンサートでも演奏されず、この曲目当てにコンサート会場に足を運んだ新ダイアナ・ファンたちをガッカリさせた。この曲はしばらく歌われることはなかったが、その後、同じくテレビ・ドラマ『愛という名のもとに』の挿入曲をカバーで歌うことになり、彼女も日本での自分の人気のあり方、立場を理解したようだった。以後の来日コンサートで「IF WE HOLD ON TOGETHER」はダイアナ・ロスの代表曲として必ず歌わなくてはならない曲となってしまったぐらいだ。
今回取り上げたアルバムはダイアナ・ロスのベスト盤を除くオリジナル・アルバムの中で私が一番お気に入りのアルバムだ。どこがお気に入りかといえば、ビートのある曲、ミディアム・テンポの曲、スロー・バラードの曲が適当に散りばめてあり、曲のクオリティも皆水準以上、なおかつアルバム、トータルとしてもダイアナ・ロスの音楽に対する愛情みたいなものを感じることができるからだ。ダイアナ・ロスは私生活ではちょっと宗教ぽい部分があるとも聞いたことがある。このアルバムでの歌唱は歌を通しての伝道師的な部分すら感じることができるほど丁寧に歌いこまれている。
長い間エンターテイメント界に君臨しているとスキャンダルもいろいろあるだろう。しかし、このアルバムに関しては素直に彼女の歌声、息使いに耳を傾けることができる。聴き終わった後、とても豊かな気持ちにもなり、音楽好きで良かったな、と改めて感じてしまう一枚だ。
彼女の日本における知名度を一気に上げた「IF WE HOLD ON TOGETHER」が収録されているのも嬉しい。
機会があれば、ぜひご堪能あれ。
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