すぐわかるあなたの犬の知能指数 / メリッサミラー著・高橋恭美子訳

犬を飼っていたり、犬が好きな人以外は一生読む必要もない本だろう。しかも訳本だし日本語タイトルもいかさない。いくら犬好きでも犬の知能指数など興味もない。自分の愛犬が一番なのだから知能指数などで優劣や比較などはしたくもない。
だからこの本の存在は知っていたが、タイトルから毛嫌いして読む気にはなれなかった。しかし、ある人から犬を飼う上でかなり役立つことが書いてあるから読んでみたらと薦められ借りて読んでみた。そして目からウロコ。
犬が喋れると言ったら、犬に興味がない人はもちろん、犬を飼っている人ですら「そんな馬鹿な」となるだろう。それは言葉という概念で考えるからだ。例えば異国の地で全く言葉が違う人種に意思を伝える場合、言葉という手段よりも目や表情、身振り手振りで伝えることになるのだと思う。
犬も同じで人間の言葉は喋らないが、鳴き声や泣き声、目、仕種で自分の意思を人間(飼い主)に伝えることはしているに違いない。問題は飼い主側がそれを理解しようとしてるかどうかだ。多くの飼い主は「馬鹿な」で終わってしまっているのだろう。犬とのコミュニケーションを先入観からしようとしない飼い主、これほど哀れな飼い主はいないだろう。
知能指数なんてくだらないと思って読んだこの本には、知能指数を計るためのいくつかの設問がある。この設問がなかなか曲者で飼い主にしてみれば、なるほど犬をこのような目で見なくてはならないのか。なるほど犬にはこのように接することも必要なのか。なるほど犬はこんな風に考えての行動しているのか。などと、なるほどのオンパレードだ。そして、過去に語られた犬に関するたくさんの言葉も紹介されている。これがまた面白い。
こんな寓話があった。
この世に最初に登場した男女に与えられた膨大な仕事の中のひとつに動物たちの役割について決めるということがあった。男女のところに動物の代表が集められたその瞬間、人間と動物たちの間に大きな地割れが起きて両者を分断した。男は叫んだ。「自分と共に生きたいものは、割れ目を飛び越えてこっちに来い」と。だんだんと広がっていく割れ目を命がけで飛び越える意思と勇気を持っていたのは犬だけだった。飛び越えた犬は前足だけ地面に触れてぶら下がった状態だったが男に手を差し伸べてもらい引き上げてもらった。これが犬と人間の長い付き合いの始まりだという。
馬鹿げていると言ってしまえばそれまでだ。しかし、この本には未熟な飼い主が気づいてもいないたくさんの犬飼いのヒントが隠されている。
目次:
? はじめに
? 賢い犬
賢い犬の脳と感覚能力
賢い犬の思考力
英雄としての賢い犬
訓練における賢い犬
賢い犬とテレパシー
? 決定版犬のIQテスト
1.視覚的状況判断能力
2.聴覚的状況判断能力
3.社会性
4.家庭生活への適応性
採点表
結果分析
犬のIQ換算グラフ
犬のIQランキング表
? 人と犬、その交流の歴史
神話と実生活における犬のさまざまな役割
犬の最大の役割
? 決定版犬の飼い主IQテスト
1.犬の飼い主としての素質
2-aあなたは犬をどれだけしつけられたか?
2-b犬はあなたをどれだけしつけられたか?
3.献身度
4.思いやり
採点表
結果分析
飼い主のIQ換算グラフ
飼い主のIQランキング表
飼い主のタイプ別お薦め犬品種
? 犬を飼うことで得られること
聡明な飼い主
犬たちがわたしたちに教えてくれること
伝説における高潔な犬
犬を飼うことで得られるそのほかのこと
犬の唯一の欠点
訳者のあとがき
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ナンシー関・トリビュート

2002年6月12日・・・ちょうど1年前にこの世を去った消しゴム版画作家のナンシー関。容姿に関してはおおよそ自分の趣味の範疇ではないが、「噂の真相」を始めアチコチの雑誌で連載されたエッセイはいちいち頷きながら読めるものが多かった。
ナンシー関が単独で執筆したものが多かったが、友人?である放送作家の町山広美との対談集(『隣家全焼』他)などは個人的には大変趣味だった。「肌が合う」この言葉に言えるようにナンシー関と町山広美は肌が合ったのではないだろうか。
ナンシー関ファンの業界人も多かった。そして亡くなったことにより、カリスマ性は更に大きくなったようだ。その表れがこの『ナンシー関・トリビュート』の発売ではないだろうか。
ナンシー関を良いと思わないとセンスがない・・・という風潮が無きにしも非ずではあったが、彼女の交友の広さと評価の高さを知るにはじゅうぶんすぎるほどの本である。
ナンシー関ファンは必読の本だ。
目次:
■トリビュート・ナンシー関
→いとうせいこう 繰り言とか、逃避とか、無念とかではなく
→吉川潮 ナンシー関の了見
→安齋肇 ナンシーからの小包
→萩原健太 ナンシー、ごめん。笑って忘れてくれ。
→押切伸一 「闘い」を胸に刻んで
→まついなつき きせかえナンシー
→天久聖一 ナンシーさんとの思い出
→渡辺祐 軸のぶれない大後輩
■テーマ・エッセイ
→高橋洋二 <テレビ業界>
TVから排除させたかったもの 現場の方からみたナンシー
→永江朗 <定点観測>
作業台のこちら側
→川村邦光 <民俗>
亡命か、越境か、ナンシー関の“現場”から
→能地祐子 <音楽>
ただそこにある赤いペダル・スティール
→水越真紀 <メディア>
“メディアの中の彼女”を見つめる3つの「J」
→紫牟田伸子<アート>
捺しまくる私 ポップアーティスト・ナンシー関
→イトウユウ<フィールド>
孤独の「現場」者 ナンシー関方法論研究序説
■特別対談
→町山広美 リリー・フランキー
ナンシーが今いたら・・・女子高のお姉さんは見ていた
■ナンシー関コレクション
→エッセイ ナンシー関のTV Watching
→4コマ・マンガ 砂漠は生きている
続・砂漠は生きている
→インタヴュー ナンシー関の見方(構成・川勝正幸)
→消しゴムは消えず 彫られた気になる人々BEST 50
→対談・座談
みうらじゅん
フェロモン顔は今や絶滅種だ!
テリー伊藤
95年を裁く!お笑い大法廷
南伸坊・清水ミチコ
人間、すべては「顔」にあらわれる
松尾貴史
「すっとこどっこい」TV戯評
小田嶋隆
有名人、勝手に格付けいたします ムーディーズより辛口!
山田五郎
すみれの花、咲く頃に オーガニック/ブランド
■特別インタヴュー
→えのきどいとろう 「関直美って、すごく面白いんだよ。」
■評論
→長谷正人
テレビ世界の生態学的観察者 ナンシー関の倫理をめぐって
→阿部嘉昭
もがく仕種の可愛さこそが 「不快の快」時代の魅惑的な身振りだ
■資料
→ナンシー関(まず完全)ブック・ガイド
?田義秀・大西香織・樹里祐飛
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あずみ / ネタばれ度:★☆☆

ビッグコミック・スペリオールで連載中の漫画『あずみ』の映画化だ。去年、映画化されると聞いた時、あずみを上戸彩というアイドルらしき子が演じるということも相まって、ダメな映画だろうなと全く無視を決め込んでいた。
しかし、映画公開に先んじてのプロモーションに見事に洗脳されて、公開されたらかなり気になる映画となってしまった。そして、ついに映画館に足を運んだ。
面白かった。かなり。
期待していなかったから面白かったのかもしれない。と言ってしまうと制作者に失礼になってしまうかなと思うほどエンターテイメントとして面白かった。この面白かったのは脚本のせいか監督のせいなのかと問うてみると恐らくは監督の手腕によるところではないだろうか。監督の北村龍平という人は1969年生まれということだから監督しては若い世代のほうに入るのだろう。彼の他の作品は見たことないが、この『あずみ』が代表作になることだけはまず間違いないだろう。
つまらない映画の大半は監督の自己満足でしかないことが見え見えだ。自己満足ゆえにフィルムを短くカットすることができない。日本映画が意味もなく長尺なのは名監督が少ない所以でもあるだろう。『あずみ』も上映時間が2時間22分と聞いていたので、同様の心配を持って見ていたが、その危惧は無用のものだった。北村監督の優れているところは、編集の段階でどうにかなるだろうという思いで無駄なフィルムを回していない点なのではないだろうか。この監督は、撮影の段階で概ねどのような仕上がりになるかを想定して撮影に臨んでいるような気がしてならない。それほど、綿密に練られた映画のように思えた。
そして映画『あずみ』が面白かった点は、あずみが敵対するいわゆる悪役のキャラクターが際立って魅力的なところだ。この点は、原作の小山ゆうのチカラなのかもしれない。オダギリ・ジョー演じるところの「最上美女丸」や狂気の「佐敷三兄弟」などは見ていて鳥肌が立つほど魅力的だ。なぜか評価が高い『マトリックス』の敵役など足元にも及ばないほど魅力的な悪役達である。
登場人物のコスチュームも古い言い方をすればパンクぽくて面白い。これは悪役に限らずあずみの仲間たちにもいえることだ。時代劇ながら近未来的な香りさえ漂ってきそうな気持ち良い違和感を感じることができたのも面白かった。
唯一残念なのは、数少ない女性出演者である、やえ役の岡本綾、彼女は存在感もなく演技力もない。なぜ出ていたのか全く不明である。関係者のしがらみとしか考えられない。
その点、主役のあずみ役の上戸彩はずいぶん頑張ったのだろうなという部分があちこちに見られた。原作のあずみの「異国の血」を持つハーフ的なイメージはまったくないものの、映画版あずみを見事に確立していたと言っていいだろう。
映画の宣伝で盛んに言われていた「あずみの200人斬り」はまさに監督の独演場で、今まで見たこともないカメラワーク、CGであろう映像処理、など漫画独特の仮想空間を実写で見せてくれるので非常に面白いものだった。
出演している若い子たちの容姿も昔の日本人のそれとは違って日本人離れしているし、映像監督の資質も昔に比べて明らかに向上しているのだろう。巨匠と呼ばれる監督のスタイルはもう必要ないのかもしれない。
ストーリーの流れから、パート2の制作はまず間違いないと言っていいだろう。そう言えば音楽も全く印象に残っていないから恐らく付け足しでしかなかったのだろう。この点も残念かもしれない。
この『あずみ』はアメリカ人にもウケそうだが、アメリカ公開の話はないのだろうか。何はともあれ、上質のエンターテイメント邦画を見せてもらった。と言いつつも売店でパンフレットを買う際にちょっと恥ずかしかったのはアイドル出演映画ということへの偏見なのだろうか。
2003年作品。142分。監督:北村龍平。
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