
決して面白くないわけではないが、見終ったあとに「こんなものなのかな」と思ってしまったのはそれだけ期待感が高かったからだろう。やはりパート2ものは難しいということだ。今まで見た映画の中でパート2のほうが面白かったのは『エクソシスト2』『ターミネータ22』『エイリアン2』などでその数は少ない。
この『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』(以下OD2)は国民的な娯楽映画としてパート2への期待度は前作同様かなり高かっただろうから関係者のプレッシャーも相当あったことだろう。しかし、勢いに乗っている制作チームはプレッシャーをも楽しむことができるのだろう。OD2も少々の不満はあるものの娯楽映画としては高水準を保っていたと思う。
映画を見ながらまず思ったのは、訳の分からない女性差別反対などをスローガンにあげている女性団体からクレームなど来ないのかなということだった。OD2では湾岸署で起きた事件を担当する警視庁の管理官に女性警視正・沖田仁美(真矢みき)が抜擢させられるが事件解決半ばでその立場は大きく変わってしまう。極端な言い方をすれば「女には管理職などできないんだよ」と言うメッセージにもとれてしまうのでギョッとしてしまった。
そしてもう一つ、メッセージのように思えたのが「組織に勝るものはナシ」と言うことだ。事件は、従来の組織とは違う新しいタイプの犯人「組織」と旧来の警察「組織」との戦いという構図を含んでいる。そして勝利するのはもちろん警察組織だから、組織イコール権力という図式も含んでいたのかもしれない。
ところで、先の管理官の役を演ずる真矢みきだが、この人は元宝塚出身ということだけあって、立ち姿がとても美しい。特に最初に登場するシーンで警視庁の階段をハイヒールで降りてくる時の美しさは、もしかしてこの人をキャスティングした理由はこのシーンにあったのかと思ってしまうほど美しいシーンだった。
OD2は、元々フジテレビの連続ドラマだっただけあってテレビ的な戦略が成されている。現フジテレビ本社のあるお台場地区を最大限に使うことによりお台場イコールODというイメージを植えつけることがこの映画の成功の最大の原因かもしれない。OD2で出てくる場所は、いつも実際に目にするところばかりだったので個人的には楽しめた。東京以外の観客にとっては、お台場ガイドブックのようにも見えただろう。このあたりの戦略にはただ脱帽。感心するばかりだ。
そして、このシリーズで素晴らしいのは他の日本映画に比べて音楽に力を入れていること。音楽によって潜在意識をコントロールできるという術を完全に理解しているあたりはこれまたテレビの発想なのだと思う。オープニングでのタイトルバックで期待感を盛り上げる音楽は素晴らしいの一語に尽きる。
そして、ヤラれたと思ったのは湾岸署捜査官が犯人に銃撃されるシーン。これはテレビスポットや予告によって完全に騙されてしまった。このあたりもテレビ的な発想なのかもしれない。これらを考えると日本映画の才能は今後もテレビ畑から出てくる可能性が高いのかもしれない。
最後に残念なのは、犯人グループのイデオロギーというか犯行動機に全く説得力がないことと人物像にも全く魅力がないことだ。犯人側に魅力がないと正義側の魅力もかなりなくなってしまうように思える。
2003年。138分。
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